釣り馬鹿(ヘルシング風味)





 


 

 

諸君、私は釣りが好きだ。

諸君、私は釣りが好きだ。

諸君、私は釣りが大好きだ。

 

 

磯釣りが好きだ。

投げ釣りが好きだ。

川釣りが好きだ。

渓流が好きだ。

毛鉤釣りフライが好きだ。

船釣りが好きだ。

穴釣りが好きだ。

筏釣りが好きだ。

擬似餌釣りルアーフィッシングが好きだ。

 

 

磯場で、堤防で、砂浜で、川べりで、湖畔で、沼沢地で、船上で、氷上で、用水路で、釣堀で

この地上で行われるありとあらゆる釣り行為フィッシングが大好きだ。

竿を並べた、鮎師のオトリ鮎が、解禁の花火と共に清流に放たれるのが好きだ。

空中高く抜き上げられた鮎が、身切れもせずにタモ網に納まった時など心がおどる。

石物師の操る、ダイコーの強竿が、大物石鯛をゴボー抜きするのが好きだ。

咆哮を上げて、大型両軸リールから、糸を引きずり出していったヒラマサを

力任せのポンピングで引き寄せた時など、胸がすくような気持ちだった。

足並みを揃えた、カゴ釣り師たちが、一点集中キャストで、魚を寄せるのが好きだ。

緊張状態のカジキ釣り初心者が、既にギャフが打たれたのに、なおリールを巻こうとする様など、感動すら覚える。

快楽主義の、カップル釣り師に堤防で、大物を見せつける時などもうたまらない。

泣き叫ぶドラグを見つめる泳がせ師が、私の振り下ろした手のひらとともに、金切り声を上げて大合わせをくれるのも最高だ。

にわか釣り師が、貧弱装備で健気にも立ち向かう大メジナを、4号磯竿12号太ハリスでゴボー抜きした時など、絶頂すら覚える。

 

 

餌取りの群れに、付け餌を滅茶苦茶にされるのが好きだ。

必死に守るはずだった釣り場にゴミが撒き散らされ、釣り禁止立ち入り禁止にされていく様は、とてもとても哀しいものだ。

釣りクラブの物量に押し潰され、釣り場を追いやられるのが好きだ。

横入りしてきた泳がせ釣り師にポイントを奪われ、大物を釣り上げられるのは屈辱の極みだ。

 

 

諸君、私は釣りを、地獄のように楽しい釣りを望んでいる。

諸君、私と同じ道を歩む釣友諸君、君達は一体、何を望んでいる?

更なる釣りを望むか?情け容赦のない、鬼のような釣りを望むか?

全身筋肉の限りを尽くし、懐具合を寒くする、嵐のような釣りを望むか?

 

 

釣りフィッシング!!釣りフィッシング !!釣りフィッシング !!

 

 

よろしい、ならば釣りフィッシングだ。

我々は満身の力を込めて、今まさにキャストせんとする竿を握った拳だ。

だが、退屈なサラリーマン生活の中で、金が貯まるまでの間、堪え続けてきた我々に、ただの釣りではもはや足りない!!

 

 

遠征を!!一心不乱の大物釣りを!!

 

 

我らは微力な趣味の釣り師、10万人に満たぬサンデー釣り師に過ぎない。

だが諸君は、一騎当千のツワモノだと、私は信仰している。

ならば我らは諸君と私で、総力一億と一人の釣り師集団となる。

我々を忘却の彼方へと追いやり、ポイントを独占して眠りこけている連中を叩き起こそう。

ライフジャケットを掴んで、引きずり下ろし、眼を開けさせ、思い出させよう。

連中に恐怖の味を、思い出させてやる。

連中に我々の、ビギナーズラックを思い出させてやる。

天と地のはざまには、奴らの哲学では思いもよらぬ事がある事を思い出させてやる。

10万人のサンデー釣り師で、大物記録を塗り替え尽くしてやる。

 

 

征くぞ 諸君

 

 

 

 

 

 

 

釣りの部屋 目録に戻る            コンテンツに戻る